特定非営利活動法人 米沢伝承館

上杉謙信

 上杉謙信は、長尾為景(ためかげ)の第二子として亨禄3年(1530)1月21日越後春日山城(新潟県上越市)に生まれました。長尾氏は越後守護職上杉氏を補佐する守護代の役をもつ家柄でした。謙信は幼名を虎千代(とらちよ)といいます。

 永禄4年(1561)32才の時に、関東管領上杉憲政(のりまさ)の譲りを受けて上杉氏を相続し、上杉政虎と改名しました。また、足利将軍義輝(よしてる)の一字を賜わり輝虎(てるとら)と改め、元亀元年(1570)41才の時に謙信と称しました。謙信は皆さんもご存じのとおり、文武両道に秀でた戦国時代の名将で、正義を重んじた真の英雄でしたが、天下の平定を前にして、惜しくも、天正6年(1578)3月13日、春日山城で亡くなりました。享年49歳。

謙信を身近に感じたいなら、米沢へ

 謙信のお墓は米沢にあります。

 謙信は、確かに米沢の地に足を踏み入れることはありませんでした。しかし、 遺骸は甲冑をつけ、甕に納めて密封し、春日城内の不識庵に納められ、2代景勝が、慶長3年(1598)、会津に移ると、遺骸もまた会津城内に移され、さらに慶長6年、景勝は遺骸を奉じて米沢に移り、城内の御堂に安置しました。正面に霊柩、右に善光寺如来、左に泥足毘沙門天を納めて守護の掟を定め、大乗寺・法音寺をはじめ21寺、僧50名をもって廟務を掌り、以来300年、藩祖を崇敬することは他にその類例のないほどでした。

 廃藩の後、明治5年に上杉神社が建立され、また、遺骸は明治9年10月8日、上杉家歴代の廟所、上杉家廟所の正面に納められました。

 こうして、戦国の英雄上杉謙信は米沢に祀られるに至ったのです。

 上杉神社参道左側の小山にある謙信祠堂址は、米沢で一番神聖な場所の名残として、ぜひ、訪れてみてください。


● 上杉家廟所  ● 上杉神社  ● 上杉謙信祠堂址


謙信の遺品はほとんどが米沢にあります。

 景勝は、謙信の遺骸とともに遺品も米沢に持ち込みました。

 その多くは、上杉神社境内にある稽照殿に収蔵・展示されています。

 また、国宝の「洛中洛外図屏風」と「上杉家文書」は米沢上杉博物館に収蔵されています。年に何回か原本展示がありますので、新着情報をチェック。


● 稽照殿  ● 米沢上杉博物館


上杉神社がある松ヶ岬公園は謙信ワールド

 上杉神社に向かう参道や境内には、謙信に由来する石碑や銅像が点在しています。


上杉謙信銅像
上杉謙信銅像

九月一三夜陣中作の石碑

九月一三夜陣中作の石碑

霧満軍営秋気清

数行過雁月三更

越山併得能州景

遮莫家郷憶遠征


霜は軍営に満ちて 秋気清し

数行の過雁 月三更

越山 併せ得たり能州の景

遮莫(さもあらばあれ) 家郷 遠征を憶う


霜は軍営に満ちて、秋気が清清しい

雁がいくつかの列を成して飛んでいき、

月は真夜中の空に冴えわたる。

越中・越後に加えて、今は能登の景色まで目の前にしている。

家族が私のことを心配しているだろうが…そんなことはどうでもよいではないか。


頼山陽が「日本外史」で取り上げた、謙信が七尾城を攻め滅ぼす直前に詠んだと言われている有名な漢詩です。現在は、詩吟の有名な題目として吟じられています。九月一三夜の碑は3カ所存在します。上杉神社周辺で探してみてください。


上杉謙信銅像
九月一三夜陣中作の石碑

上杉謙信公家訓一六ヶ条の碑

謙信は、子々孫々への戒めとして一六箇条の家訓を残しました。現代にも当てはまる素晴らしい家訓です。ぜひ、一読を。


上杉謙信公家訓一六ヶ条の碑
上杉謙信公家訓一六ヶ条の碑


一、心に物なき時は心広く体 泰(やすらか)なり

 (物欲がなければ、心はゆったりとし、体はさわやかである)


一、心に我儘なき時は愛敬失わず

  (気ままな振舞いがなければ、愛嬌を失わない)


一、心に欲なき時は義理を行う

  (無欲であれば、正しい行い、良識な判断ができる)


一、心に私なき時は疑うことなし

  (私心がなければ他人を疑うことがない)


一、心に驕りなき時は人を教う

  (驕り高ぶる心がなければ、はじめて人を諭し教えられる)


一、心に誤りなき時は人を畏れず

  (心にやましい事がなければ、人を畏れない)


一、心に邪見なき時は人を育つる

  (間違った見方がなければ、人が従ってくる)


一、心に貪りなき時は人に諂(へつら)うことなし

  (貪欲な気持ちがなければ、おべっかを使う必要がない)


一、心に怒りなき時は言葉和らかなり

  (おだやかな心である時は、言葉遣いもやわらかである)


一、心に堪忍ある時は事を調う

  (忍耐すれば何事も成就する)


一、心に曇りなき時は心静かなり

  (心がすがすがしい時は、人に対しても穏やかである)


一、心に勇みある時は悔やむことなし

  (勇気を持っておこなえば、悔やむことはない)


一、心賤しからざる時は願い好まず

  (心が豊かであれば、無理な願い事をしない)


一、心に孝行ある時は忠節厚し

  (孝行の心があれば忠節心が深い)


一、心に自慢なき時は人の善を知り

  (うぬぼれない時は、人の長所や良さがわかる)


一、心に迷いなき時は人を咎めず

  (しっかりした信念があれば、人を咎めだてしない)


春日神社

春日神社
春日神社

 今から一千年以上前に、越後の国司として派遣されていた藤原遠成が、上越の春日山頂に奈良の春日大社を分霊し城内の平和を祈りました。

 戦国時代の上杉家は代々春日神社を守り神として敬い続け、藩主の移封と共に会津から米沢へと移ってきました。

 大正8年の米沢大火で焼失しましたが、昭和56年市民の浄財で再建されました。

 上杉神社の左奥、荘厳な雰囲気の春日神社は必見です。

特定非営利活動法人 米沢伝承館
〒992-0039 山形県米沢市門東町1丁目1番11号 TEL.0238-20-5646